③婚活は少子化と非婚化の最前線   -女性の選択、理論とその実際-

婚活にまつわる研究・言説をクソ真面目に考察します。

3-4 非正規雇用の既婚男性は何人くらいいるのか

正規雇用の既婚男性はどのくらいいるのか

 

 未婚化・非婚化現象において男性の所得が要因として論じられる際、男性の低所得化の原因とされるのが非正規雇用に従事する男性の増加である。「失われた90年代」と称されるように、90年代中~後半には長期的不況の影響を受け、正規雇用に就けない若者が多く存在した。そうした若者は、やむなく非正規雇用者となった。そして、正規雇用に就く機会を逸したまま、20歳代後半~30歳代を迎え、非正規雇用による賃金水準の低さから結婚できないまま今日に至っている。言うまでもなく、非正規雇用は、正規雇用と比べ、昇給や賞与において不利な条件で働くケースが大半であり、低所得者層に固定されてしまう。こうしたルートをたどった男性が多く存在し、低所得者となり未婚率を上昇させている。こうした背景には、日本の新卒一括採用や硬直化した労働市場、産業構造の変化等、様々な要因を指摘できるが、それは本論のテーマからは逸れる為、詳述は省略する。

 つまり、90年代にはじまった長期的不況が、当時の若者の非正規雇用を増やし、低所得者層を増大させた。そして、非正規雇用低所得者層として固定化された青年男性は、低所得であるがゆえに未婚状態にある。収入の低い男性ほど、未婚率が高く、女性との交際経験も少ないという通説は、非正規雇用として働く男性に具現化されていると言える。以上が一般的な見解である。

 では、そうした非正規雇用に従事する男性はどのくらいいるのだろうか。その総数、既婚・恋人がいる男性と未婚・恋人がいない男性、それらの人数について、先ほどと同じように推計してみたい。

  

正規雇用の既婚男性は約50万人

 

 非正規雇用に従事する男性の既婚者数についての推計は次のとおりである。対象とする男性の年齢は、2039歳とする。一般的に、恋愛や結婚に適した年齢と考えられることから20代・30代を対象とした。推計にもちいる基礎資料は、先と同じように公的調査データを使用する。基本資料となるデータの引用元については、表3-2の注釈を参照していただきたい。

 まず、労働力人口の総数をもとにして、2030歳代、それぞれ5歳刻みで年齢階層別の男性の人数を算出する。次に、非正規雇用率をもちいて、各年齢階層別の非正規雇用にある男性の人数を算出する。そうして求めた非正規雇用者数について、非正規雇用者の既婚率をあてはめ、各年齢層の既婚者数を算出する。こうした手順で作成したのが表3-2である。

3-2によると、2039歳の男性で非正規雇用者であり、かつ、既婚者であるものは、20歳代で約16万人、30歳代で約35万人となる。概算で、結婚に適した年齢層にある男性の非正規雇用・既婚者数は、50万人を超える。

 

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