③婚活は少子化と非婚化の最前線   -女性の選択、理論とその実際-

婚活にまつわる研究・言説をクソ真面目に考察します。

3-7 考察②:4人に3人をどう見るか

考察②:4人に3人をどう見るか

 

さらに注目したいのが、30歳代男性について、既婚・恋人ありの総数に占める年収400万円未満の割合が約75%にのぼるということである。75%は、言い換えれば、4人に3人が年収400万円未満の所得層者であることを意味する。

年収400万円を下回る男性について既婚・恋人がいる割合は低い、というのが通説の中核である。確かに、年収400万円よりも所得が低い男性の既婚・恋人ありの割合は、それ以上の所得層にある男性よりも低い。しかしながら、先に見たように、年収400万円を下回る所得層にある男性は、割合も総数も、それ以上の収入がある男性に比べて圧倒的に多い。すなわち、その所得層における既婚・恋人ありの割合が低くとも、既婚・恋人あり男性全体に占める割合は高くなる。

子どもの貧困、教育格差、ひとり親世帯等々、子どもを焦点とした社会問題は後を絶たない。そして、一般的に、そうした諸問題の最大の原因は、親や家庭の経済的困窮に帰結される。未婚化・非婚化の原因は、結婚や恋愛におけるパートナー選択の際、女性は男性の経済力を重視する。その理由は、最低限生活に必要な経済的基盤の為、または、現在までの生活水準上昇の為だというのが通説の見解である。もし、この理論が正しければ、子どもの貧困をめぐる諸問題は起こらないか、もしくは原因が経済的理由とはならないはずである。なぜなら、そもそも女性が選ぶ男性には最低限の経済力が備わっているからである。だが、実際は、こうした社会問題はあまりにも多い。

非婚化についての通説は、非婚化現象については明確な原因を提示しているものの、それと関連する社会問題との整合性という点では矛盾がある。しかも、非婚化現象に関する諸々の研究等には、こうした矛盾点についての言及はない。

既婚・恋人のいる男性は、4人に3人が年収400万円を下回っている。この推計を踏まえると、結婚後の家庭生活で生じる様々な社会的・経済的問題が何故起こるのか、その答えが見えてくる。

3-8 結論

 

結論

 

 本章で説明してきたとおり、恋愛や結婚に適した年齢層の男性は、多くが年収400万円未満である。また、そうした年代の既婚者や恋人がいる男性に限定した場合でも、4人に3人が年収400万円未満である。年収400万円未満である男性は、恋愛や結婚が難しいという通説のイメージとは異なり、そうした男性でも既婚者や恋人がいるものも多い。こうしたことからわかるのは、結婚や恋愛に関して女性が男性を選択する際、その基準が必ずしも経済的理由を優先するとは言えないということである。

 確かに、経済的な充足を目的とし、恋愛や結婚を手段とする女性も多いだろう。あるいは、経済的目的が契機ではあったが、その後、男性との関係が実質的な恋愛や結婚へと変化するケースも考えられる。

また、この章で示したデータは、山田氏によって提示された2次的資料をもとに作成したものであり、3次的なデータとなる。ゆえに、通説以上に非婚化現象における実態から乖離しているという指摘もあるだろう。もちろん、「年収400万円の壁」によって結婚や恋愛には縁の薄い状況にあるとされている男性が多数存在するのも事実である。しかしながら、本章での推論は、女性が男性を恋愛や結婚の相手として選ぶ場合、必ずしも経済力を可否判断にしてはいないことを示している。つまり、非婚化の進行は、経済力が相対的に低下した男性が多くなったからではないということである。

では、非婚化の原因は何か。その原因は、男性、女性それぞれの問題や社会的な要因を様々な観点から考える必要がある。通説によると男性の経済力低下が原因であるが、本章では、女性が男性を選ぶ際に、経済力以外の側面を重要視している可能性が強いことを示した。実際のところ、女性は、パートナー選択の際、男性のどういった点に注目しているのだろうか。また、その注視・選択はいつ、どのようになされているのか。これらについて、次章以降、検討してゆく。